フランス ナントに滞在しています。
一般社団法人プロジェクタのディレクター/美術家の高橋喜代史です。この度S-AIR AWARDのエクスチェンジプログラムで2018年2月5日から3月7日までフランスのナント市に滞在しています。プロジェクタの優秀なスタッフ3名にお留守番をお願いしつつ、、、AIR(アーティスト・イン・レジデンス)というプログラムでの滞在制作なのですが、AIRとはヨーロッパでは古くからある事業で、フランスのローマ賞を起源にもつとも言われております。(諸説あり) イタリア生まれのダ・ヴィンチの「モナ・リザ」が何故フランスのルーブルにあるかというと、1516年にフランス王フランソワ1世の招きによりフランスに移り住んだ際にモナリザも持参し晩年までフランスで加筆し続けたからです。フランスに呼んでいなければモナ・リザは多分イタリアにあったでしょうね。日本の絵師も全国の寺社仏閣に絵を描いたり、松尾芭蕉のように旅をしながら俳句や紀行文をつくっていたのと同様に、旅をすることで、違う文化・風習・風土に触れることで作品を深めていったり、新たな世界観を構築していくということを推奨するものです。
そのようなAIRでフランスのナントに来ているのですが、行くためには受け入れ先が必要です。AIRによっては様々なのですが、今回はフルサポート型といって住居やスタジオ、渡航費、滞在費、宿泊費、作品の材料費など全部が用意されているAIRの中でも一番の好条件です。渡航費・交通費はS-AIRから、滞在費・宿泊費・材料費はナントのLe Lieu uniqueという劇場(カルチャーセンター)から支給されます。
前置きが長くなりましたが、そんなわけでフランスで1ヶ月間、いろいろなものを見て、食べて、飲んで、話して、聞いて、考えて、作品を作るのが今回の仕事です。こちらに来て展示担当のパトリシアと相談したところ、展示は義務ではないからしなくても良い。「ここにいること、考えることが重要なんだ」と言われました。多くのAIRは滞在した成果を見たいので展示が義務付けられているのですが、歴史あるヨーロッパだとただただ思索にふけるだけ、本を読むだけ、制作もしないで良いAIR施設やAIRプログラムがあります。僕もそのようなAIRがあるとは聞いていたのですが、今回が初めての経験で少し戸惑うというか、せっかく来たのだから展示したい!と思っているので、パトリシアとこれから交渉が始まります。
フランスに一ヶ月も滞在する機会もそうそうないだろうから、ナント以外も旅したいのですが、制作もあるし、旅している余裕はあるかな?AIRって大体2-3ヶ月が多くて半年とか1年も普通にあって1ヶ月はとても短い方。「あの日本人あっという間に来て、あっという間に帰っていったね」なんて記憶にすら残らないのもアレなんで、ナントでしっかりといい作品をつくってから帰国したいと思っています。
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wikipediaよりローマ賞(フランス語:Prix de Rome) 芸術を専攻する学生に対してフランス国家が授与した奨学金付留学制度。1663年、ルイ14世によって創設された。
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高橋喜代史 Takahashi Kiyoshi アーティスト/一般社団法人PROJECTA ディレクター 1974年北海道生まれ。言語とコミュニケーションに関する作品を制作。近年は他者との距離や境界について考察する映像インスタレーション作品を制作。主な展覧会としてフランス、ニュージーランド、北アイルランドでの個展、カナダ、中国でのグループ展、中国吉林省図門江彫刻公園にモニュメント設置など札幌を拠点に国内外で活動。1995年ヤングマガジン奨励賞、2010年JRタワー「アートボックス」グランプリ。2012年より、500m美術館、札幌駅前通地下歩行空間での[PARC]など展覧会やアートプロジェクトの企画運営も行う。2015年一般社団法人PROJECTA設立。